私が太極拳を習い始めた頃は、姿勢を維持する為に足腰の筋肉に力が入っていました。そして、この筋トレ的な疲れが、体幹強化とか筋肉増強になって、身体に良いのだろうと誤解していました。
しかし太極拳を続ける内に、筋トレ的な筋肉は使わない。放鬆が大切。一つ一つの動作を大切にゆっくり動くべし。手だけで動かさず身体全体で動くべし。と知りました。
ゆっくりと身体全体で動く為には、動作を出来るだけ多くのコマ送りに分解し、そのコマ毎に有る注意点も理解した上で、分節化して身体を動かすべきと、思い至りました。
この分節化した動きを身に付けるのに、ゆっくりとした音楽で練習する事が助けになりました。簡化24式太極拳の練習で使う音楽は,5分30秒~6分程度の長さの音楽です。分節化が十分でないと、音楽よりも動作が先に進んでしまい、更なる「間/溜め/次の動作の準備作業」が必要だと気付かされました。
ゆっくりとした音楽に乗って動く事で、太極拳の套路の一つ一つに必要な「間」、武術に欠かせない「溜め」、次の動作の為の「準備作業」を、身に付ける練習が出来たと思います。
しかし、ゆっくりとした音楽に乗って動き、そこに身心をゆだねて行くと、何と言うか、もう一つ、別の次元の太極拳が見えて来た様に思います。なにもかも忘れて、自然に動き始める自分の身体と、向き合った時の気持ち良さが格別なのです。