太極拳套路の最初の動きは、しっかり準備をして、そっと動き始め、徐々に大きな動きにして行く。起勢でも、野馬分鬃でも、攬雀尾でも、すべてそんな意識で動作する。
水で一杯になった洗面器を、別の場所に持って行く時と同じです。洗面器を持ち上げる時には、肩の力を抜いて、意を集中すると言うか、準備をします。
いざ持ち上ったからと言って、急に動き出しては水がこぼれてしまいます。そっと動き始めて、調子が分かってから後には、正規の速さになります。
例えば、左攬雀尾の捋の動作の最初に、相手の右肩を取って「さあ、捋をするぞ」と言う時ですが、そんなに気迫満点では、相手が構えてしまい動いてくれません。
肩の力を抜いて準備が出来たら、腕ではなく意を働かせて相手と同期し、身体をそぉっと動かし始めるのです。
今の私の理解で言うと、準備とは、虚領頂勁・含胸抜背・沈肩墜肘・鬆腰鬆胯・気沈丹田・尾閭正中・立身中正なのだろうと思っています。