New1TR’s blog

太極拳の事について書こうと思います。

398)新しい採点基準

最近、太極拳の大会で「新しい採点基準」が採用されるようになった。

新しい採点基準では、蹬脚で蹴り出す足が、水平以上に上がらないと減点だし、下勢独立の下勢で軸足の大腿部が、完全に座り込んでいないと減点になる。

この採点基準は、外観的な身体能力の高さを審査員にアピールする類の太極拳を、外観上で評価する為のものであり、蹬脚の足が高く上げられず、下勢で低い姿勢になれないのは身体能力が低いのだから、太極拳の評価が低いのは当然と言う考え方である。

演武者の内側/勁力という見えにくいものを見据えて、高く評価する東洋的な考え方に代わって、見えやすい外観的な身体能力の高さ/見栄えの良さを、高く評価する西洋的な考え方に基づいた採点基準だと思う。

だから、見えにくい勁力/心静体鬆/気沈丹田を追求してきた高段者が、必ずしも高得点を取るとは限らない。勁力/心静体鬆/気沈丹田の実現が不十分でも、身体能力さえ有れば高得点を取り得るのだ。

すなわち、この採点基準の範疇に於いては、健康志向太極拳を始めた愛好者が、これ迄の指導方針に基づいて追求してきた理想像は、否定されるという事になる。

これ迄の太極拳指導は、他と争う事を避け、相手の力を受け流して、養生を第一にする、と言う方向性を持っており、これが、健康志向とマッチングして愛好者を増やしてきたし、年配者にも親しみやすい生涯スポーツとしての位置付けも持ってきている。

新しい採点基準は、空手や柔道の様に、スポーツとして認められたい。オリンピック種目にして欲しい。と言う願いが有って作られたものであり、若い人達の身体能力の高さを評価する基準とはなるが、60歳を過ぎて健康志向で太極拳を始めた長年の愛好者を、この基準で評価するのは間違いだと思う。

ローカルの大会に参加する60歳以上の太極拳愛好者には、これ迄の指導方針にマッチした採点基準で評価して欲しいものである。